子どもの人権を守るためにできることは
人権とは、この世に生きるすべての人々が命と自由を確保し、幸福を追求する権利などのことです。
もちろん子どもにも守るべき人権があります。
しかし残念ながら、現代でも子どもの人権が守られない事例が発生しています。
本記事では、日本が抱える子どもに関する人権問題やその問題に関する課題や対策などをご紹介します。
子どもの人権問題にはどんな課題があるのか
1989年の国連総会では、子どもの人権と自由を尊重し、保護と援助を進めることが盛り込まれた「児童の権利に関する条約」が採択されました。
日本でも、1994年に批准しています。
しかし現代においても、子どもの人権を侵害する問題があとを絶ちません。
たとえば、以下のような課題があります。
いじめ
子どものいじめは年々巧妙化しており、手段もエスカレートしていく傾向にあります。
暴行など見た目に分かりやすいものばかりではなく、無視や物を隠すなど陰湿で執拗なケースもあとを絶たず、見つけにくいものとなっています。
さらに近年では、スマートフォンなどの情報通信機器が介在することもあり、一層見えにくくなっているとされます。
エスカレートすると、いじめが原因で自殺や殺傷事件に発展することもあり注意が必要です。
また、自殺や殺傷事件にまで至らなくても、健全な成長と人格の形成に大きな影響を与えてしまうため、重大な人権侵害であることを理解する必要があるでしょう。
体罰
学校教育法11条等によって教育職員による体罰は禁止されています。
しかし、体罰による人権問題は多発しているのが現状です。
体罰は子どもの心身に深刻な影響を与えてしまうため、どんな理由があろうと許されることではありません。
さらに、体罰は「いじめ」を助長したり、暴力容認の空気を作り出すなど、さまざまな問題をはらんでいると考えられます。
児童虐待
近年、子どもを虐待し、中には死にまで至らしめるという事件が発生しています。
虐待は、心身の健全な成長と人格形成に大きな影響を与えるとされる問題です。
児童相談所に寄せられる虐待に関する相談対応件数は年々増加しており、2019年には過去最高となったとされています。
また家に閉じ込めたり、食事を与えなかったり、不潔なままにするなどの育児放棄(ネグレクト)も問題となっています。
児童ポルノ・児童買春等
児童ポルノや児童買春、性的虐待、インターネット上における児童ポルノの反乱など、子どもを性的な搾取の対象や商売の道具にする問題が、世界的にも深刻な問題となっています。
児童労働
児童労働とは、義務教育を受けることを妨げたり、心身の健康や発達にとって有害となったりする労働のことを指します。
子どもの人権問題解決に関する取り組み
子どもも一人の人間として尊重され、守られるべきものです。
子どもの人権問題における課題を解決するためにさまざまな取り組みが行われています。
ここでは国や自治体などが行っている取り組みの一例をご紹介します。
いじめ防止対策推進法
「いじめ防止対策推進法」は2013年6月成立、同年9月から施行されている法律です。
いじめによって児童等の教育を受ける権利が侵害されたり、心身の健全の成長等に重大な影響を与えたり、身体や生命に重大な危険が生じたときのための、対策が明記されています。
また国や地方公共団体等の責務が明らかにされており、いじめ対策の基本的な方針なども策定されています。
児童虐待の防止等に関する法律
2000年5月に成立した児童虐待防止法は同年11月から施工されています。
この法律により、虐待の禁止や虐待を受けた児童の保護のための措置などが定められました。
2004年4月に一部改正され、虐待を「人権の著しい侵害」と明記し、定義が明確化されました。
そして通告義務の範囲の拡大や、児童の自立支援なども盛り込まれています。
さらに2007年、2008年にも一部改正され、児童の安全を確認するための立ち入り調査等の強化や保護者に対する面会や通信等の制限の項目が盛り込まれました。
さらに、国や県、市町などにも児童家庭相談窓口が設けられ、相談しやすくなっています。
児童買春・児童ポルノ防止等に関する法律
1999年11月に「児童買春・児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」が施行されました。
また児童買春や児童ポルノの多くはインターネット上で行われているため、出会い系サイトの規制などの対策も行われています。
さらに、国だけでなく都道府県もさまざまな整備を行っています。
たとえば、東京都の青少年の健全な育成に課する条例では、児童ポルノ根絶に関わる環境整備を努める責務が定められています。
まとめ
子どもも一人の人間として、人権は守られなくてはいけません。
しかし、いじめ、体罰、児童虐待、児童ポルノなど、子どもの人権はさまざまな問題によって侵害されています。
人々はこの現状をしっかりと認識すると共に、子どもをかけがえのない一人の人間として尊重し、健やかな成長を見守る社会をつくることが重要とされています。