犯罪被害者等の人権問題とは?課題や対策について

犯罪被害者や家族等は、犯罪で傷ついているだけでなく、中傷やプライバシーの侵害等による二次的被害を受ける場合もあります。

そのため、犯罪被害者等の人権に対する関心を高め、課題や対策についても知っておく必要があるでしょう。

本記事では、犯罪被害者等に関する人権問題とその課題と対策についてご紹介します。

犯罪被害者等に関する人権問題

近年、テレビだけでなくインターネットやSNS等の普及に伴い、犯罪被害者やその家族に関する人権問題への関心が高まっています。

犯罪被害者等は、犯罪自体での被害によって身体的、精神的、経済的に苦しんでいます。

しかし、それに追い打ちをかけるようないわれのないうわさや中傷、プライバシーの侵害などによって、私生活が脅かされるなどの問題が起こっているのです。

こうした被害は「二次的被害」と呼ばれ、大きな精神的ショックや失職・転職による経済的困窮をもたらします。

またトラウマやPTSDなどを引き起こすこともあり、犯罪被害者などが受ける精神的被害は深刻とされています。

人々の関心の度合い

鳥取市が行った「市民意識調査」による「あなたは犯罪被害者やその家族に関する人権上の問題について、特に問題となっているのはどのようなことだと思いますか」という問いに対し、「犯罪行為によって精神的負担を受ける」と答えた人は約52%です。

そして「報道によってプライバシーに関することが公表されたり、取材によって私生活の平穏が保てなくなる」が約46%、事件のことに関して、周囲にうわさ話をされる」が約43%という結果になっています。

このことから、犯罪行為自体によって受ける苦痛のみならず、二次的被害によって人権を侵害されることによる精神的苦痛も同様に関心を持たれていることが分かります。

そのため、今後は犯罪被害者等がより人権を尊重される社会を作るべく、当事者の家族などの心情をより慮るための啓発活動に取り組むとしています。

犯罪被害者等の人権問題の対策や支援

犯罪被害者等は、十分な権利を尊重されず支援を受けられていない状況が続いており、社会から孤立することも珍しくありませんでした。

そこで被害者団体等が、犯罪被害者やその家族が置かれている状況を訴えた結果、社会的関心が高まりを見せました。

そしてようやく2000年に「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続きに付随する措置に関する法律」が制定されます。

そして2005年に「犯罪被害者基本法」が施行されます。

これによって国は基本計画を策定し、犯罪被害者等のための施策を推進することとなりました。

そして、毎年11月25日~12月1日の1週間を「犯罪被害者週間」として定め、犯罪被害者等の現状や犯罪被害者等の名誉、人権、生活への配慮の重要性への理解を深めることを目的として活動が行われています。

都道府県単位でも支援が行われている

国だけでなく、都道府県単位でも支援が行われています。

たとえば東京都は、犯罪被害者等に対する支援に明確な姿勢を示すべく、2020年に「東京都犯罪被害者支援条例」が施行されました。

この条例は、犯罪被害者等のさまざまなニーズに応えるべく、具体的な支援の計画が策定されています。

たとえば、犯罪被害者等が心身に受けた被害の回復や軽減および生活の再建を図ること、そして犯罪被害者等を社会全体で支えることなどが盛り込まれています。

その一つが、「東京都総合相談窓口」の運営です。

これは公益社団法人被害者支援都民センターと協働で運営されており、犯罪被害者等のさまざまな相談にのっています。

たとえば、性犯罪や性暴力等の被害者の多くは誰にも相談できないままの人も多いです。

そうした人たちを支援すべく、「東京都性犯罪・性暴力被害者ワンストップ支援センター」が運営されており、誰でも相談できる体制が整っています。

さらに警視庁では、犯罪被害者等の精神的支援を行うためのホットラインや相談窓口なども設置しています。

また大阪府では、2006年に「大阪府犯罪被害者等支援のための取組指針」が策定されています。

そして2007年には「犯罪被害者等支援関連施策集」を発行するなどの取り組みが行われています。

犯罪被害給付制度

殺人等の故意の犯罪行為によって、不慮の死を遂げた被害者の遺族や重傷・重病、障がいなどの重大な被害を受けた被害者に対し、国が給付金を支給する制度です。

この制度は、精神的・経済的打撃の緩和を図るために制定されました。

まとめ

犯罪被害者等は、犯罪そのものによって傷ついているだけでなく、いわれのない中傷やうわさ、プライバシーの侵害などの二次的被害で苦しんでいる人も多くいます。

こうした人権侵害を避けるためには、人々が犯罪被害者等の人権問題について正しい知識と現状を知ることが大切とされています。

少しでも興味を持った方は、犯罪被害者等が置かれている現状と問題、そして解決策について目を通してみてはいかがでしょうか。