世界と日本の所得格差の現状は?その原因と対策を解説

世界中で提起されている社会問題の一つに所得格差があります。

近年ではある特定の人々に富が集中し、貧しい人々はますます貧しくなるという状況が固定化する傾向にあるのです。

所得格差は日本でも広がり社会問題となっています。

格差社会はさまざまな社会不安を生み出す原因にもなり、早急に解決する必要があるといえます。

本記事では世界と日本の所得格差の現状や原因、対策方法について解説します。

世界と日本。所得格差の現状

世界で広がる所得格差

2020年1月21日、国連は「世界社会情勢報告2020」において、先進国や途上国に関わらず世界の3分の2以上の国で所得格差が広がっていることを報告しました。

ブラジルやアルゼンチンなど近年は格差が小さくなってきた国でも、所得格差と社会的不平等が再び広がり始めているといいます。

世界各国での所得格差の広がりは、世界的な社会問題となっており、ユニセフによれば2017年には世界の1%の富豪が持つ資産は世界全体の資産の33%にもなるといいます。

また世界の貧困問題解決に取り組むNGO団体「オックスファム」の報告では、2019年時点で10億ドル以上を保有する資産家2100人余りの資産合計は、世界の6割の人々の資産合計を上回るともいいます。

所得格差による不平等は社会の分断、経済発展やインフラ開発等を妨げる原因となります。

こうしたことから所得格差解消のための対策が、世界中で求められています。

日本でも広がる所得格差

所得格差は日本においても大きな社会問題となっています。日本では1990年代前半のバブル経済崩壊以降、経済は停滞状況にあります。

このため世帯当たり所得、1人当たり賃金も1990年代以降減少傾向にあり、もはや平均賃金では先進国から脱落する可能性さえあるといいます。

こうした社会情勢のなか、日本でも所得格差が問題視されているのです。

日本では特に子どもの貧困率が大きな社会問題となっています。

2018年の子どもの相対的貧困率は13・5%でした。

子どもの7人に1人が貧困状態になり、国際的にも非常に高い水準となっています。

貧困状態にある子どもは医療、食事、進学などさまざまな面で不平等な状況に置かれ、将来も貧困から抜け出せない可能性が高まります。

日本においては子どもの貧困対策は緊急の課題といえるでしょう。

所得格差が起こる理由

気候変動による影響

近年は地球温暖化により全世界が気候変動の大きな影響を受けています。

なかでも熱帯地域は最も気候変動の影響を受けていますが、それにより熱帯地域の貧しい国々は農業や観光業、健康面などで大きな打撃を受け、より貧しくなっているといいます。

デジタル格差

ITなど近年のテクノロジーの深化は社会を大きく進化させ、ITビジネスなどに携わる人々は自身のスキルや収入を高めることができました。

しかし最新のテクノロジーから外れた業務に就く人々の多くは、ITスキルを身に付ける機会が少なく、仕事が減ったり失う人も少なくありません。

こうしたデジタル格差が所得格差を生む原因ともなっています。

インターネットにアクセスできる人々の割合は、先進国で約87%、対して開発途上国は19%といいます。

このため国家間のデジタル格差も国際的な社会問題となっています。

日本での非正規社員問題

日本では非正規社員の増加が所得格差の大きな原因となっています。

非正規社員の割合は平成元年では雇用者全体の約20%にすぎませんでしたが、平成31年には約40%となっています。

つまり日本では雇用者5人うち2人は非正規社員なのです。

国税庁による令和元年の調査によると正規社員の平均年収503万円に対し、非正規社員は平均年収175万円。

その差は300万円以上になります。

このように非正規社員と正社員との給与格差は日本における重大な社会問題であり、こうした格差解消は緊急の課題となっています。

所得格差をなくすための対処法

貧しい人々の所得をあげる

所得格差をなくす、もしくは縮小させるためには貧しい人々の所得が増加することが何よりも重要です。

ユニセフも世界の所得格差を解消するために以下の提言をしています。

・2030年までに、各国のなかで所得の低いほうから40%の人々の所得の増え方が、国全体の平均を上回るようにして、そのペースを保つ。

ユニセフが提言しているように、人種、宗教、年齢、性別に関わらず、すべての人々が能力を高めることができること。

さらに財政面、賃金面、社会保障面ですべての人々が、平等に扱われ、富が公平に分配されることが求められます。

途上国への開発援助や貿易の促進

所得格差をなくすためには途上国に対する開発援助の促進も引き続き重要です。

ユニセフが提言するように、開発途上国やアフリカ諸国、小さな島国などへは政府開発援助や直接投資などによって国内経済の成長を促し、人々の所得向上を目指す必要があります。

また貿易面でも途上国の国内産業を守り、生産者が適切な収入が得られるよう貿易を促進することも重要です。

まとめ

所得格差は日本をはじめ世界中で拡大し続け、大きな社会問題となっています。

このまま所得格差が続くと、世界の各地で大きな社会不安が起こる可能性が高まります。

世界中の人々が安全に暮らすためにも、日本はもちろん世界中の所得格差をなくすための問題意識を持つことが重要です。