大量生産と大量消費がもたらす社会問題について

現在、私たちは大量生産及び大量消費社会に生きています。

大量生産・大量消費社会は、世界中の多くの人々に豊かな暮らしを与えてくれました。

しかし環境の悪化など、大量生産・大量消費社会がもたらすさまざまな事象が、地球規模で社会問題となっています。

本記事では大量生産・大量消費がもたらす問題点や対策方法について解説します。

大量生産・大量消費がもたらす社会問題

大量の廃棄物

大量生産・大量消費は世界中で大量の廃棄物を発生させ、環境問題を起こしています。

世界銀行がまとめた報告書である「2050年に向けた世界の廃棄物管理の現状と展望」では、今後何らかの対策をとらなければ、世界の廃棄物の量は2050年には現在より70%も増加すると予測しています。

廃棄物をこれ以上増やさないためにも、早急に何らかの対策が求められています。

プラスチックごみ

廃棄物でも、特に社会問題となっているのが、プラスチックごみ問題です。

適切に処理されずに廃棄されたペットボトルやプラスチックが河川や海に流れ出て、海の生態系に大きな悪影響を与えているのです。

プラスチックは自然の中では完全に分解されることがありません。

海洋に流れ出たプラスチックは、魚介類を通して私たち人間の体内にも蓄積されることになります。

プラスチック問題は海の生態系だけでなく、人間の健康にも悪影響を与えるのです。

なお現在、世界では年間約800万トンものプラスチックごみが海洋に流れているといわれています。

海の生態系をプラスチックごみから守るためにも世界的な対策が求められます。

食品ロス

廃棄物と同様、大きな社会問題となっているのが食品ロス問題です。

世界中でまだ食べられる食品が大量に廃棄されているのです。

その数量は世界で年間13億トンといい、日本では年間612万トン廃棄しているといいます。

日本での食品ロスの原因はスーパーマーケットなどでの売れ残り、家や飲食店での食べ残し、さらには売り物にならない規格外の廃棄等です。

途上国においても流通環境の不備などで市場に出回る前に食物を腐らせてしまう食品ロスが起こっています。

世界では途上国を中心に9人に1人が飢えや栄養不足の状態に置かれています。

世界中の人々に食料が行き届くためにも、食品ロス問題は世界全体で解決しなくてはいけません。

地球環境の悪化

大量生産・大量消費社会では大量の廃棄物が発生されます。

廃棄物の処理のためには広大な土地が必要になり、さらにごみの焼却により大量の二酸化炭素も発生します。

二酸化炭素は工業製品に限らず、さまざまな生産物の生産過程においても大量に発生し、このため地球温暖化が地球規模の社会問題となっています。

生産過程においては大量の水資源を使用するほか、農業など農薬の使用による土壌汚染なども大きな社会問題となっています。

労働環境の悪化

大量生産・大量消費社会は、発展途上国などでの労働環境の悪化という社会問題も内包しています。

先進国の企業は割安な労働力を求めて、発展途上国に生産工場を移転してきました。

発展途上国では雇用が生まれ経済発展するメリットがある反面、環境汚染のほか、劣悪な労働環境などの社会問題も起こっています。

例えばコットン畑の生産現場では労働者は大量の農薬や化学薬品を浴びることで、深刻な健康被害が起こっているといいます。

また発展途上国では児童労働も社会問題化しています。

世界の子供の10人に1人が児童労働に従事しており、こうした人権侵害にも私たちは目を向ける必要があります。

大量消費・大量生産の課題に対する取り組み

SDGs「つくる責任つかう責任」

大量消費・大量生産に伴うさまざまな社会問題は、持続可能な社会を阻む大きな要因となります。

そこで国連では2015年9月に採択したSDGs(Sustainable Development Goals「持続可能な開発目標」)において、「つくる責任つかう責任」目標12を設定。世界の国々が持続可能な生産・消費社会の構築を目指すことを提言しました。

そこでは廃棄物や食品ロスの削減、生産過程における化学物質排出の削減、天然資源の効率的な管理・利用などが提言されています。

私たち消費者もリサイクルやリユースに協力し、持続可能な社会づくりに参加する義務があります。

日本における取り組み

日本でも大量生産・大量消費に伴う社会問題を解決するために、さまざまな取り組みが行われています。

例えば食品ロスに対しては「食品ロスの削減の推進に関する法律」や「食品リサイクル法」を制定。食品ロスの削減を推進しています。

また循環型社会を目指す法整備も整備されており、廃棄物の98%は収集したうえで適正に処理されています。

プラスチックごみなどの廃棄物問題に関しても3R(リデュース・リユース・リサイクル)を推進し、処分するだけでなく、資源を再利用するなど循環型社会を目指したさまざまな取り組みを行っています。

最後に

大量生産・大量消費は私たちの暮らしを豊かにし、社会を大きく発展させました。

しかし廃棄物の増加や発展途上国における労働問題など、早急に解決すべき社会問題が課題となっています。

こうした問題を解決するために、私たち一人ひとりの取り組みが、世界にとって重要といえます。