不妊治療の一助として新しい家族の形を模索する「代理出産」

「代理出産」とは、身体的に理由があり、妊娠や出産を望むことができない夫婦に代わって、第三者の女性に妊娠・出産をしてもらうことです。

さまざまな理由で不妊治療をしている夫婦にとって、子どもを迎える方法のひとつとして、代理出産を選択肢として検討するケースも増えています。

代理出産を検討するケースとは?

代理出産を検討するケースとしては、次のような理由が考えられます。

・癌などの疾病により子宮を全摘出している

・生まれつきの子宮欠損や奇形がある

・重度の子宮筋膜症

・重度の子宮腺筋症

・露忌憚スキー症候群

・体外受精を実施しても陰性になる

・健康上の理由で妊娠・出産ができない

・この他、医師が認める疾病がある

このように、子どもが欲しいと思いながらも、さまざまな理由で自然妊娠・出産が難しい夫婦にとって、代理出産は自分の子を持つための新しい解として注目されています。

日本では代理出産に関する法整備が整っていない

日本においては2021年7月現在、代理出産に関する法整備が整っていません。

そのため、日本産婦人科学会の会告では国内での代理出産は禁止とされています。

理由としては、生まれてくる子どもの福祉を最優先すべきであり、代理出産は代身体的リスク・精神的プレッシャーを伴うということ、家族関係が複雑化すること、代理出産契約は倫理的に問題がある、などが挙げられます。

子どもと遺伝的なつながりを持つことができる方法なのに、日本では代理出産が法律的・倫理的問題でできないため、海外で代理出産を行う事例も増えています。

2003年に厚生科学審議会生殖補助医療部会により、代理出産を禁止するべきとの主旨の報告書が提出され、法制化される動きがあったものの、実際に規制する法制度は現在まで未完備となっています。

そのため、海外での代理出産を選ぶことは、法的には禁じられていません。

代理出産が社会問題化する根底的な理由

妊娠や出産は、合併症などで死に至るケースもありますから、女性にとって命がけで行うものです。

そんな代理出産を引き受ける代理母が多いエリアとしては、インドやタイといった貧困地域が多い傾向にあります。

生活のために、命がけで代理出産を引き受けるという社会的背景が、そこにはあるのです。

一方、依頼者側は高額な代理出産費用を用意できる富裕層となります。

富裕層が貧困地域の女性に代理出産を依頼するという形になってしまうため、貧富の差から生まれた生殖ビジネスとして捉えられる面があるのも事実です。

また、無事に生まれてきた子どもに障害があった場合、引き取りを拒む事例も過去ありました。

人道的に考えると、代理出産に懐疑的になる風潮があるといえるでしょう。

「子の親は誰か」という問題が根底に存在し続ける

法整備が進んでいない日本では、海外で代理出産をしたものの「子の親は誰かどう説明するか」という問題が付きまといます。

現在の日本の民法(民法779条、最高裁 昭和37年4月27日)においては、分娩の事実により母子関係が発生すると定義づけられていますから、子を産んだ人こそが母親です。

そうなると、代理出産を依頼する夫婦の卵子と精子の受精卵を移植して出産した場合でも、出産をした人が実母として定義づけられてしまいます。

遺伝子上では実母であるにも関わらず、法律上では実母が養母ということになってしまうのです。

この問題をクリアするためには、代理出産を依頼し、子どもを授かった夫婦が普通養子縁組または特別養子縁組を行う必要があります。

普通養子縁組の場合は、戸籍上の父母欄に記載されるのは、実父母・養父母両方の氏名です。

養父母との続柄に関しては「養子」「養女」と記載されます。

一方で、特別養子縁組を行うと、遺伝子上の実の両親であり、法律上では養父母となる夫婦との間に、実の親子同等の安定した親子関係を成立させるために、戸籍上も実子として登録されるようになります。

代理出産のメリット

では、代理出産のメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

代理出産のメリットには、具体的に次のようなものがあります。

成功率が高い

代理出産をする場合、グレードの良い受精卵を選び、その受精卵を若く、健康状態良好な代理母に託すことが可能です。

確実に子どもを授かることができるのも、代理出産のメリットといえるでしょう。

自分が妊娠できない状態でも、子どもを授かれる

さまざまな理由で妊娠・出産ができない場合でも、自分の子どもを授かることが可能です。

医療の進歩により、以前なら子どもを諦めざるを得ない状態の夫婦にも、子どもを持てるというのは大きなメリットとなるでしょう。

日本における代理出産の「これから」

少子高齢化が進み、高齢出産が増加している背景もありますから、代理出産関連の法整備は国として早々に取り組むべき課題といえます。

代理出産で生まれてきた子どもに対して、誰の子どもだと説明するのかというのは、代理出産を希望する夫婦の前に大きな壁として立ちはだかっています。

それらをクリアにする法整備が整えば、社会の理解も進み、あらゆる形で生まれてくる命が幸せに過ごせる時代を迎えられるのではないでしょうか。