高齢者の人権問題にはどんなものがある?課題と対策について
日本では少子高齢化などが問題となっており、今後も加速することが予想されています。
そこで問題となっているのが高齢者の人権侵害です。
人々がみな幸福でのびのびと暮らせる社会を目指すには、高齢者の人権問題についても理解を深める必要があるでしょう。
本記事では、高齢者の人権問題の概要や課題と対策についてご紹介します。
高齢者の人権問題の現状と課題
近年、日本は平均寿命が80才を超える世界有数の長寿国となっています。
しかし一方で、出生率の低下によって少子化傾向に歯止めがかかっておらず、少子・高齢化社会を迎えています。
そんな中で、高齢者の人権問題も顕在化しています。
たとえば以下のような課題が考えられます。
介護に関する課題
加齢に伴って介護が必要な高齢者や認知症を患う高齢者も増加しており、介護の長期化や介護者の高齢化が問題となっているのです。
時間的・経済的負担もあり、介護者に重い負担がのしかかり、これに起因した身体的虐待、心理的虐待、経済的虐待などが生じています。
さらに、認知症により判断力が低下した高齢者の財産管理などの問題もあります。
介護への負担やストレスが虐待につながることも多いため、介護者は適切なサービスの利用や相談などによって負担軽減を図ることが求められます。
悪質商法による被害
高齢者は認知力の低下などから悪質商法の被害に遭うケースが増えています。
高齢者の一人暮らしや夫婦だけの世帯も増えており、誰にも相談できない状況に陥っているのも一因でしょう。
こうした被害に遭わないためには、地域の協力や啓蒙活動などが必要とされています。
生活上の課題
高齢者は年齢を理由に社会参加の機会が減ったり、賃貸住宅への引っ越しを拒否されることもあります。
地域社会や家族関係が大きく変わることで、地域からの孤立も考えられます。
高齢者の知恵や経験、技術が活用されず、「高齢者だから」と決めつける偏見や固定観念なども考えられるでしょう。
高齢者ができるだけ住み慣れた場所で生きがいを持ち、自身が持つ豊かな知識と経験を活かして地域に参加したり、自立した生活を送ったりすることが、人間としての尊厳を保つことにつながります。
高齢者の人権問題への対策
高齢者が健やかで尊厳を保った生活をするためには、どんな対応をすればよいのでしょうか。
ここでは国や都道府県などが行っている対策をご紹介します。
高齢者の人権を守るために必要なこと
京都市が行った「高齢者の人権が守られるために特に必要なことはどのようなことだと思いますか」という質問に対し、最も多い約6割を占めたのが「高齢者をねらう犯罪防止など権利や生活を守る制度の充実」です。
それとほぼ同率で続いたのが「就業機会・生涯学習やボランティア活動の機会の充実」です。
それに続き、「建物の階段や道路の段差解消などバリアフリーの推進」が5割を超えています。
これから、まずは高齢者が搾取されず、権利や生活を守るべきと感じている人が多いことが分かります。
また、地域社会への関わりを保ち続けることや、物理的に暮らしやすい社会をつくることが大切と感じているようです。
人権相談所の設置
法務局や地方公務局は「高齢者の人権問題についてどう相談していいか分からない」という人たちのために、人権相談所を設定します。
面談や電話、インターネットなど、さまざまな方法で相談することが可能です。
人権相談所では、人権侵害と思われる不当な暴力や虐待、差別などを相談できます。
当事者だけでなく、周囲で見聞きした人の相談も受け付けています。
相談料は無料で、難しい手続きも不要なため、気軽に相談できる場所の一つです。
人権相談所の救済手続きの流れ
人権相談所では、それぞれのケースに応じた措置を行うのが特徴です。
まず法務局職員や人権擁護委員が公正な立場から相談を聞き、解決に導くための取り組みが行われます。
相談の申し出を受けたあと、必要な調査を行い、人権侵犯の事実を確かめた上で判断するとしています。
そして、以下の7種類の中から適切な措置がなされます。
・援助
関係機関の紹介や法律上の助言等
・調整
当事者間での関係の調整
・要請
実効的対応ができる者へ必要な措置を行うように要請
・説示
人権侵犯を行った者に対し、反省を促すなどの説示を行う
・勧告
人権侵犯を行った者に対し、文章で勧告を行う
・通告
関係行政機関に文書で通告し、措置の発動を求める
・告発
刑事訴訟法の規定に沿って告発を行う
その後、処理結果が通知され、必要に応じてアフターケアなども行われます。
まとめ
誰もが年を重ねれば、心身ともに衰えが生じます。
そのことで高齢者を阻害・蔑視したりする社会になると、安心して年を重ねることができないでしょう。
また、高齢者の尊厳の蔑視は虐待にもつながります。
こうした人権侵害を防ぐためには、高齢者の肉体的・精神的衰えを正しく理解し、高齢者も社会を構成するメンバーであるとの認識が必要でしょう。
また、高齢者介護に関する適切なサポートの充実も求められます。