外来種の侵入と我々人類がすべきこと

外来種とは、もともと生息していなかった地域に侵入した生き物のことを指します。

外来種というと外国から来た生き物だと思いがちですが、国内でもそれまでいなかった地域に持ち込まれた生き物は外来種と呼ばれます。

外来種には様々な種類があり、すべてが問題を引き起こすわけではありません。

しかし、外来種によって甚大な被害がもたらされる場合もあります。

ここでは、外来種が侵入する原因や外来種の侵入によって起こり得る問題とそれに伴う課題、そして人類がするべきことについてまとめました。

外来種の侵入の原因

外来種の侵入の原因は、大きく「意図的な侵入」と「非意図的な導入」の2つに分けられます。

意図的な侵入とは、人間が何らかの目的でその地域に生息していなかった生き物を野外に放したり植栽したりすることを指します。

主な目的としては、害虫の駆除などが挙げられます。

なお、野外に放つ予定ではなかった生き物を管理体制の不備によって放してしまうこともあります。

そして、非意図的な導入とは人や物の移動とともに生き物が侵入することをいいます。

例えば、船や飛行機で移動する際に昆虫や寄生虫、植物の種子が紛れ込んでしまうなどです。

大きな生き物が非意図的に導入されることはほぼなく、小さな生き物である場合がほとんどだといえるでしょう。

外来種の侵入が進むと現れる問題

外来種の侵入が進むことで現れる問題としては、「生態系への影響」、「人間への影響」、「農業・水産業への影響」の3つが考えられます。

どれも、場合によっては大きな被害につながるといえます。

生態系への影響

新たに侵入した外来種は、もともとその地域に生息していた生き物や植物を食べたり餌の奪い合いをしたりすることで、生態系を崩してしまいます。

また、近縁の種と交雑することによって雑種が生まれ、遺伝的攪乱が起こる場合もあります。

さらに、その地域には存在しなかった病気が持ち込まれることによって感染が起きた例もあります。

人間の健康への影響

外来種は、環境だけではなく人間の健康も脅かします。

毒を持っている危険な外来種もいれば、人を噛んだり指したりすることで危害を加える外来種もいます。

危険性が高い場合には、その地域で暮らす人々にとって大きな脅威になり得るといえるでしょう。

農業・水産業への影響

外来種は、農業や水産業へも悪影響を及ぼします。

畑を踏み荒らしたり畑で栽培されている野菜を食べたりするほか、漁業で対象となっている魚を食べてしまう外来種もいます。

農家にとって大きなダメージになるのはもちろんのこと、私たちの食生活にも影響が出てくるといえるでしょう。

外来種の問題に対する課題

外来種の問題に対する課題は、外来種被害予防三原則に示されている「入れない」、「捨てない」、「広げない」の3点に集約されるといえます。

入れないとは、その地域に悪影響を及ぼす可能性がある外来種を入れないということです。

外来種が悪影響を及ぼす可能性を理解したうえで、まずはその生き物が分布していない地域に入れないことが重要だといえます。

捨てないとは、もともとは生息していない地域で飼われている生き物を野外に放さないということです。

一度野外に放すと対応が難しくなるため、厳重に管理する必要があります。

しかし、何らかの理由によって野外で外来種が繁殖してしまう場合もあります。

その場合は、それ以上繁殖を広げないことが大切です。

繁殖を抑えることによって、被害を最小限に留めることができます。

外来種の侵入に対して人類がすべきこと

課題を解決するためには、私たち人間は適切な対処をしていかなければいけません。

ここでは、外来種に対する具体的な対応策についてまとめました。

早期発見・早期防除を心がける

外来種対策においては、早期防除が非常に重要です。

早期発見・早期防除によって被害を大幅に防ぐことができるほか、外来種対策に対するコストも抑えられます。

被害が広がってからではなく、速やかに対策を行わなければいけません。

広範囲で一斉に対策をする

1つの自治体が侵入した外来種に対して対策を行っていても、近隣の自治体での対策が不十分では意味がありません。

外来種の繁殖を効率的に防ぐためには、複数の自治体で協力して一斉に対策をすることが大切です。

外来種の買い上げ制度を利用する

外来種の買い上げ制度を利用することで、効率的に外来種を捕獲することができます。

ただし、お金を得るために長期的に外来種の捕獲を行いたいと考える人がいるなどのデメリットもあるため、導入の際は慎重に検討しなければいけません。

関連法令に留意しつつ外来種を処置する

野外で繁殖した外来種は捕獲する必要があります。

しかし、捕獲した外来種をむやみに殺すことはできません。

動物愛護管理法や外来生物法などの関連法令に留意したうえで、捕獲した外来種の処置を行う必要があります。

1人1人が責任を持って行動することが重要

外来種は、もともとの生態系や人間の健康、そして農業・水産業などに悪影響を与える可能性があります。

そして、一度被害が広がってからでは手遅れになる場合もあります。

だからこそ、外来種の危険性を理解したうえで1人1人が責任を持って行動することが重要だといえるのではないでしょうか。