騒音問題の放置は危険!ご近所トラブルと対策

騒音問題は、私たちの生活に身近な環境問題の一つです。

環境省の調査によると、全国の地方公共団体に寄せられた騒音問題の苦情件数は、毎年16,000件以上。

騒音問題の苦情の半数は、建設作業、工場からの騒音です。

ただし、建設作業や工場による騒音は、入居前に周辺環境を確認すれば避けられます。

ここで解説するのは、誰にでも起こり得る生活音による騒音問題の現状と対策です。

身近な環境問題である「集合住宅の騒音」

マンション・アパートなどの集合住宅では、複数の世帯が一つの建物で生活するため、騒音問題が起こりやすい環境です。

この記事を読んでいるあなたも、一度は隣人の騒音に悩まされた経験があるのではないでしょうか。

生活音による騒音問題は、

・掃除機、洗濯機の振動

・子供の泣き声やペットの鳴き声

・夫婦喧嘩の怒鳴り声

・夜中、早朝の足音や排水音

など例を挙げたらきりがありません。

どのような生活音が騒音になるかは個人の受け止め方の問題であり、あなたが普通に生活しているつもりでも、近隣住民にとっての騒音になる可能性があります。

また、騒音は「不快な音」というネガティブなもののため、騒音問題に悩む人の中には相手がわざと騒音を出しているのではないかと感じる人もいるでしょう。

集合住宅で騒音問題に発展する原因の一つは、コミュニケーション不足です。

話し合える関係であれば解決できる問題も、コミュニケーション不足からご近所トラブルに発展するケースも珍しくありません。

日本における騒音に関する法律

現時点(2021年)での日本の法律には、工場や車のエンジン音などによる騒音を規制する「騒音規制法」がありますが、生活音を取り締まる法律はないのが現状です。

ただし、隣人の故意による騒音で健康被害が出るなど、個人の権利や利益を損害された場合は、民法709条の「不法行為」に該当する可能性があります。

そうは言っても、生活音による騒音は被害者側の主観的な主張となるため、不法行為に該当するかどうかの判断が難しいところです。

以下の事例は、過去に騒音問題による損害賠償請求が棄却された事例です。

例:マンション上階の子供の泣き声、掃除機などがうるさいため下の階の住人が慰謝料を請求。下の階の住人によると、上階の住人の生活音は常識の範囲を超えているとのこと。 しかし、集合住宅では一定の生活音を完全に防止することは不可能であり、容認するべきとして棄却。

騒音問題の進行によって起こるご近所トラブル

マンションやアパートでの騒音問題が進行した場合、健康被害による訴訟や事件に発展する可能性もあります。

以下の事例は、騒音が原因で起きたご近所トラブルが事件に発展したものです。

事例1

下の階に住む男性が上階に住む女性の騒音に日頃からストレスを感じていた。ある日、騒音に我慢できなくなった男性は、ハンマーでドアを壊して女性の部屋に入り、顔面を殴った。

しかし、女性は男性が証言するような騒音は出していないと主張。

事例2

隣の部屋に住む男性の騒音に悩まされていた女性が、男性に注意しに行った。しかし、注意された男性が逆上して女性を殺害した。

上記事例のように、騒音問題は加害者であれ被害者であれ、相手次第では大きな事件になりかねません。

また、事例1のように両者の意見が食い違うなど、一方が誤解しているケースもあります。

コミュニケーション不足による関係悪化

インターネットが普及し、隣人同士のコミュニケーションが手薄な現代。

引っ越しの挨拶をしない人も増えており、隣人同士のコミュニケーションを避ける人もいるでしょう。

しかし、隣人がどんな仕事をしていて、どんな人なのかわからない状況では、前章の事例のようにすれ違いで深刻なご近所トラブルに発展する可能性があります。

騒音問題を深刻化させないためには、普段から隣人とコミュニケーションをしっかり取ることが重要です。

相手の人柄や家庭の事情を理解し合ったり、「子供がうるさくてごめんなさい」など一言あったりすれば、常識的な範囲内の騒音は許容できるでしょう。

隣人の騒音問題に悩まされている場合の対策

コミュニケーションが取れていない隣人との騒音問題で悩んでいる場合、自力で解決しようとすると問題が悪化する可能性があるため、直接乗り込むのは避けましょう。

騒音問題に悩まされているときの相談先は、以下の順番です。

管理組合・管理会社→自治体の窓口→警察→弁護士

管理会社などで解決できない場合、各地方公共団体に窓口が設けられている可能性があるため、各自治体に確認してみましょう。

また、各自治体では騒音計の貸し出しを行っていることもあります。

どれくらいの騒音が発生しているか事前に確認しておくと、客観的な証拠として提示できます。

騒音を指摘された場合の対策

騒音問題に悩む人の中には、身に覚えのない騒音を指摘された人もいるでしょう。

身に覚えのない騒音を指摘された場合は、以下のように自分の生活を見直してみてください。

・早朝、深夜に洗濯機や浴室などを使用していないか

・ドアを乱暴に開け閉めしていないか

・テレビやオーディオ機器の音量は適切か

・窓を開けたままや大声で話していないか

・足音を立てないように配慮しているか

など

また、床にマットなどを敷いたり、隙間テープを使用したりすると部屋の防音対策ができます。

あなたが何気なく取っている行動が、隣人にとっての騒音になっている可能性があるので、一度客観的に生活の見直しを行いましょう。

ご近所トラブルを避けるために引っ越しも検討

騒音は人によって感じ方が変わるので、自分だけでどうにかできる問題ではありません。

そうは言っても、問題を放置しておくと裁判沙汰や事件に発展する可能性もあるため、どうしても改善できない場合は、事態が大きくなる前に引っ越すのも一つの手段です。