ほんとうのエネルギー問題とは?

イギリスで石炭をエネルギー源とした産業革命が動き出したのは、今から250年以上前の1750年ごろと言われています。

その約100年後にアメリカで石油の採掘が始まり、1900年代のはじめになると、自動車の大量生産が始まって、本格的に石油を利用する第2次産業革命が訪れました。

化石燃料が支える現代文明

それからおよそ100年を経て、現代社会はあらゆる分野で石油がエネルギーの中心になり、もはや石油無しでは人類の生活は成り立たないと言ってもよいでしょう。

石油はエネルギーだけではなく、プラスチック製品などの原料にもなり、工業用資源としても現代文明を支えています。

すべては化石燃料の二次利用

実は私たちが毎日使っている電気は、エネルギーではありません。

電気はエネルギーを変換して電気製品を動かすための、いわば道具であり、石油や石炭のような資源ではありません。

現代社会のほとんどが電気で動いていることを考えると不思議な気がしますが、社会を支える基盤となるエネルギーは、100年前から変わらず石油と石炭なのです。

ここで、近年注目されている再生可能エネルギーについても考えてみましょう。

再生可能エネルギーとは

太陽光発電、風力発電などは、自然界から無限のエネルギーを産出する技術として期待されていますが、こうした発電施設を作るためには、エネルギーと原材料との両面で化石燃料が必要不可欠です。

太陽光発電だけを使って、太陽光発電施設を作ることはできません。

では、石油や石炭とは別なエネルギー源と考えられている原子力はどうでしょうか。

確かに燃料はウランですが、ウランを採掘して精製する段階で使われるのは化石燃料です。

さらに原子力プラントを建設する資源になるのも化石燃料です。

付け加えれば、使用済み核燃料を処理して保管する資源も化石燃料です。

今、社会ではさまざまなエネルギー資源を組み合わせて、貴重な電力を産み出していると言われていますが、実際には再生可能エネルギーも原子力発電も、化石燃料の形を変えて2次利用しているだけ。

つまり私たちの現代文明は、化石燃料に支えられて継続しているだけなのです。

果たして石油から脱却できるのか?

現在稼働している多様な発電施設のうち、化石燃料から完全に独立したものはありません。

すべてが施設の建設、維持、燃料の調達などに関して、化石燃料と強く結びついています。

さらに忘れてはいけないことは、直接石油や石炭で発電するよりも、それを原発や再生可能エネルギー施設に変換してから発電する方が、化石燃料の消費量が増えてしまうという点です。

もう1つ重要なことは、どの発電方法にも重大なデメリットがある点で、例えば原発はクリーンなエネルギーと言われてきましたが、それが間違いであることを私たちは身をもって体験しました。

再生可能エネルギーについては、発電が極めて不安定なため、単独でメインの発電システムにすることは難しいでしょう。

電力依存社会

一方で、現代社会は今後さらに電力に頼ろうとしています。

オール電化住宅の普及推進と、現行の内燃機関から電気自動車へのシフトなどが、日本だけではなく世界中で進められています。

しかし現状でも電力供給が逼迫している状況で、ぼう大な電力需要を上乗せすると、社会全体の電力供給システムが破綻する可能性があります。

動力のほとんどを電力でまかなうことは、先に社会構造の変革とインフラ整備を終わらせないと不可能だと考えられます。

次世代のためのエネルギー革命とは?

今後、石油や石炭に代わる純粋な1次エネルギーは登場するのでしょうか。

有望な候補としては水素発電と、核融合発電が挙げられるかもしれません。

ところが無限の燃料として期待される水素も、それを水から作り出すためには別なエネルギーが必要です。

おそらく現状では化石燃料頼みになるでしょう。

他にも石油や天然ガスを改質して水素を作り出す方法もありますが、この場合石油や天然ガスをそのまま使った方がよさそうです。

では、原発よりもはるかに巨大なエネルギーを産み出す核融合はと言えば、実現のためには1億度以上の超高温と超高圧を、継続してコントロールしなければなりません。

ここでも膨大なエネルギーが必要になります。

さらに燃料になる予定の重水素は、製造過程でやはり膨大なエネルギーを必要とします。

私たちにできること

エネルギー問題の真実を知ると、将来に希望を持てなくなるように感じますが、それほど悲観的に考える必要はありません。

解決のカギも、化石燃料にあるからです。

石油はすでにずっと前から、残り40~50年で枯渇すると言われてきました。

しかし現在でも、無くなりそうだという話は聞きません。

実は石油の採掘技術が進歩したおかげで、これまでは難しいと考えられていた油田からも、石油が掘れるようになっているのです。

さらに、石炭を液化する技術も開発されていて、石油・石炭・天然ガスを合わせれば、まだ数百年以上は現在の社会構造を維持できると言われています。

私たちに今できることは、貴重なエネルギーを無駄にせず上手に使うことで、将来の社会に少しでも多くのエネルギーを残すことではないのでしょうか。