農業汚染とは何か?サスティナブルな社会と農業のために知っておくべきこと
「農業汚染」という言葉を聞くと、少し不思議な感じがするかもしれません。
本来なら様々な汚染から作物などを防ぐために色々な工夫をしているのが農業というイメージなのですが、実は農業を起点として汚染が広がるというケースもあり、これが農業汚染と呼ばれるものとなります。
持続可能な農業
サスティナブルな社会づくりが先進国の中では非常に大きなテーマとなっているため、この農業汚染という問題も、農業という産業を継続的に営む上では無視できない大切な課題ということができるでしょう。
特に最近では「SDGs」という言葉がサスティナブルとセットで語られるようになり、「持続可能な開発目標」をこの農業汚染の問題に対して設定するべきという考え方が広まっています。
ではこの農業汚染とは、いったいどんなものなのでしょう。
そしてどうしていくことで農業をサスティナブルに継続していくことができるようになるのでしょうか。
農業汚染は肥料と農薬が二大要因
農業汚染の中でも最も顕著なものが「硝酸態窒素による地下水汚染」だと言われています。
硝酸態窒素とは酸化窒素のことで、これは窒素肥料などが酸化することで発生します。
つまり、農業で使われる肥料が原因となる農業汚染です。
ではこの硝酸態窒素によってどのような弊害が起こるのでしょうか。
実はそれは人の健康を脅かすというものなのです。
肥料による健康被害
硝酸塩が血液の中に入ってしまうとヘモグロビンが変化してしまい、メトヘモグロビン血症の原因になってしまいます。
メトヘモグロビン血症はチアノーゼを引き起こし、最悪の事態生命の危険をきたす非常に危険な症状です。
このメトヘモグロビン血症が、農業に使われる窒素肥料が酸化し地下水を汚染することで引き起こされるということで、これが農業汚染の代表例と言えるわけです。
硝酸態窒素による地下水汚染は、農業で使われる「肥料」が農業汚染の大きな要因ですが、それ以外にも「農薬」が汚染になるケースもあります。
農薬による農業汚染で問題とされる物質として「臭化メチル」というものがあります。
日本においてこの臭化メチルは主に生姜の生産の際に土壌の消毒などに使われているものです。
農薬による環境破壊
この臭化メチルの問題は、単に農薬として毒性が高いというわけではなく、どちらかと言うと現在環境問題の中でも非常に注目されている「オゾン層」の破壊に繋がっているのです。
臭化メチルは厳しく使用が禁止されている「フロン」と同じくオゾン層を破壊する物質と指定されていて、現在では全廃しなければならないという動きとなっています。
しかし生姜の栽培のためには臭化メチルが不可欠だとも言われ、日本は世界でも三番目に生産量が多いというのが現状です。
先ほど臭化メチルの問題は農薬としての毒性が重視されているわけではないと説明しましたが、必ずしも直接的汚染がないというわけでもなく、実は臭化メチルは発癌性の高い物質で、二重の意味で農業汚染を引き起こすものとなっています。
その他の農業が原因となる汚染の種類
このように農業汚染の中でも重視されているのが肥料や農薬などなのですが、それ以外にも農業汚染の原因となるものがいくつかあります。
例えば農業機械や加温するための設備です。
現在の農業のほとんどではトラクターなど何らかの機械が使われていますが、燃料として化石燃料を使えば二酸化炭素が排出されますし、加温する設備などに関しても同様のことが言えます。
さらに農業に関わる設備や備品の中でプラスチックが使用されていれば、ゴミとして廃棄されたり、野焼きしてしまえば悪臭や有害物質の発生を引き起こすのも農業汚染の一つとなります。
さらに、家畜の飼育もまた農業汚染の一端を担っています。
畜舎からの排水は河川の汚染の原因となり、排泄物を処理せずに川に流せば水質汚染や富栄養化の原因となります。
さらに反芻動物の消化管内発酵によって温室効果(メタン)ガスが発生するというのも、最近では注目されている農業汚染です。
サスティナブルな社会づくりのための農業汚染対策
サスティナブルな社会、そして農業のあり方を考えれば、農業汚染は一刻も早く対策を打ち、少しでも環境に与える悪影響を低減しなければなりません。
そのために、日本のみならず諸外国においても様々な対策がなされています。
例えば米国では1980年台から「包括的環境対策・補償・責任法」が施工され、土壌汚染問題に対して効果を挙げています。
そのほか欧州や中国でもその対策は重要視されるようになり、農業汚染の解決には世界規模で取り組まなければならないという認識が主流となっています。
日本に国内においては2003年に土壌汚染対策法が施行され、土壌汚染の対策が図られています。
まとめ
さらに今後も世界的にSDGsが重要視されるようになる現状、国内においても農業汚染を防ぐための法的整備などを推し進めなければなりません。
もちろん法整備だけに頼ることなく、農業に関わる人、そして消費者一人一人の意識が、少しでも汚染を低減できるように変わっていくことが、継続可能な産業や社会づくりの基礎になることは間違いありません。