放射線物質の廃棄問題の原因と私たちがすべきこと
2011年に起こった東日本大震災以降、私たちの中でも放射線物質に対する関心が高まったといえます。
放射線物質は環境や私たちの健康に大きな影響を及ぼすため、放射線物質に廃棄問題については私たち1人1人が理解していなければいけません。
ここでは、放射線物質の廃棄問題の原因や放射線物質の廃棄によって起こり得る問題などについてまとめました。
さらに課題や私たちにできることについてもご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
放射線物質の廃棄問題の原因
そもそも、放射線物質の廃棄問題の原因はどこにあるのでしょうか。
ここでは、主な原因である「原子力発電所の運転」と「使用済み燃料の再処理」の2点をご紹介します。
原子力発電所の運転
放射線物質という言葉を耳にしたときに大半の人が思い浮かべるのは、原子力発電所ではないでしょうか。
原子力発電所で発生する液体廃棄物や雑固体廃棄物は、「低レベル放射性廃棄物」と呼ばれます。
これらは、セメントなどで固めてから低レベル放射性廃棄物埋設センターで処分されます。
使用済み燃料の再処理
使用済み燃料は、ウランやプルトニウムを回収するために再処理が行われます。
そして、その際に残る廃液は放射能レベルが高く、「高レベル放射性廃棄物」と呼ばれます。
高レベル放射性廃棄物は、地層の中に埋設して処分されます。
放射線物質の廃棄によって起こり得る問題
放射線物質は、人体と環境の両方に悪影響を及ぼします。
以下では具体的な問題についてみていきましょう。
人体への影響
放射線を大量に浴びると、細胞が死んだり細胞分裂に影響が出たりします。
その結果として、造血器官や皮膚、腸管、生殖腺などに異常が出ることがあります。
特に子供は大人と比較して放射線の影響が出やすいといわれています。
環境への影響
放射線物質による環境汚染も大きな問題です。
放射線により水質汚染が起こると、水道水の安全性が失われるほか、魚の体内にも放射線物質が蓄積されていきます。
放射線物質の問題は、私たちの食生活も脅かすといえるでしょう。
放射線物質の廃棄問題に伴う課題
放射性物質の廃棄問題に伴う課題として、まずは廃棄の方法が挙げられます。
今まで、放射性物質の様々な廃棄方法が検討されてきました。
具体的には、地層処分、海洋底処分、氷床処分、宇宙処分などです。
これらの中で、最も確実で安全な方法を実践することが大切だといえるでしょう。
そして、放射線物質に対する1人1人の意識を高めることも大切だといえます。
自治体や業者が放射線物質の廃棄問題への対処をしていても、何らかのトラブルが起こる可能性はあります。
だからこそ、いざという時の対処を知っておくことが身を守ることにつながるといえるのではないでしょうか。
放射線物質の廃棄問題に対して私たちができること
原子力発電所が稼働しており、使用済み燃料の再処理も行われている現状では、放射線物質の廃棄を完全になくすことはできません。
だからこそ、環境や人体への影響を最小限に留められるように対処する必要があります。
ここでは、放射線物質の廃棄問題に対して私たちができることについてまとめました。
正しい方法で廃棄を行う
危険性の高い放射線物質だからこそ、正しい方法で廃棄することはとても重要です。
今まで国際機関などで多くの方法が検討されましたが、海洋底処分は不確実性が大きいためロンドン条約により禁止され、氷床処分は南極の氷が溶けた場合のリスクの大きさや輸送量の高さから南極条約により禁止されました。
また宇宙処分は発射技術などの信頼性に問題があり、現実的ではないといえます。
そのため、廃棄方法は地上処分と地層処分の2択だといえます。
しかし、地上処分を行う場合は人間による長期的な管理が必要であり、次世代にも負担を与えることになります。
さらに、日本では地震や津波などの自然災害が多くあるため、安全性にも不安があります。
そのため、放射線物質に関しては最も安全な地層処分を行う必要があるといえるでしょう。
非常時における対処を知る
前述したように、放射線物質は人体に悪影響を与えます。
そのため正しい方法で廃棄することは非常に重要ですが、1人1人が非常時の対処法を知っておくことも大切だといえるでしょう。
まず、放射性物質が飛んできたときには身体に付いたり吸い込んだりすることをできる限り避けなければいけません。
まずは屋内に入り、ドアや窓を閉めましょう。
また、エアコンや換気扇を切ることも忘れてはいけません。
そして、可能であれば長袖の服を着てマスクを着用しましょう。
そして、避難の必要がある場合には市や県、国の指示に従ってください。
周囲の噂に左右されるのではなく、テレビやラジオで正確な指示を聞いたうえで正しく行動しましょう。
放射線物質から環境と身を守ろう
放射性物質の廃棄問題について考える機会は、あまり多くはないかもしれません。
しかし、放射性物質は環境や身体に大きな影響を及ぼし得るからこそ、放射性物質の廃棄問題については正しく理解しておく必要があります。
そのことが、自分自身や身近な人を守ることにもつながるのではないでしょうか。