塩害がもたらす被害とその対策

「環境問題」は世界規模で考えるべきものであると同時に、私たち自身が「身近なものである」ととらえるべきものでもあります。

今回はその環境問題のなかから、「塩害」を取り上げます。

塩害とは、塩によって受ける被害のこと

まず、「塩害とは何か」から考えていきましょう。

塩害は「えんがい」と読みます。その名前の通り、塩分が原因となって起きる被害を指す言葉であり、環境問題のうちのひとつです。

塩は私たちの生活に欠かせないものであり私たちの生活を豊かにしてくれるものですが、同時に、さまざまなものに被害を与える成分でもあります。

塩害の具体的な被害について

塩害にはさまざまなものがありますが、もっとも有名なのは、鉄筋コンクリートで作られた建造物などに対しての影響でしょう。

塩分を含んだ風(多くは海風)が鉄筋コンクリートの建造物にあたり続けることで、塩分が鉄筋コンクリートの鉄筋部分を腐食させていきます。

繰り返し吹き付ける塩分を含んだ風によって鉄筋コンクリートはひび割れ、また剥離していきます。

この結果として、あの硬く頑健に見える鉄筋コンクリート建造物が劣化していくのです。

ひどい場合は倒壊に至ることもあり、それによって大きな経済的損失・人的損害をもたらす可能性すらあります。

また、塩害が被害を及ぼすのは建物だけではありません。建物よりももっと弱い「植物」に対しても、被害を与えます。

「植物」に対しても被害が

これは実際の調理過程を想像すると非常にわかりやすいのですが、野菜などは、塩をふりかけたところから水分が出てくるでしょう。

これは浸透圧の変化によるものなのですが、まだ土に植わっている植物であっても同じことが起きます。

塩害にさらされた植物は、本来吸い上げなければならない水分を吸い上げることができず、最終的には枯れてしまいます。

この結果として、植物に甚大な影響が生じるのです。

塩分を利用した植物も

現在では塩分を含む水などを利用した植物の生産もよく行われています。

たとえば各種メディアなどに取り上げられている「塩トマト(熊本県の沿岸部で育てられるもの。小さなサイズではあるが、凝縮したうま味が特徴で、フルーツトマトの元祖といわれる)」や「塩っこネギ(千葉県で育てられている。海水を散布して作られるもので、一般的なネギよりも食味に優れるとされている)」などがその代表例です。

しかしこれらはあくまできちんと管理された特定の条件下でのみ栽培が可能となるものであり、基本的には、植物に対して塩分は悪影響をもたらすと考えるのが妥当です。

塩害の対策について

ではこのような厄介な塩害を防ぐためにはどうすればよいのでしょうか。

「建築物に対する塩害への影響」を抑えるためには、下記のような対策がとられます。

・塩害に強い建材を選ぶ

・塗装を施す

・塩化物イオンを取り除く

・クリーニングを行う

ひとつずつ見ていきましょう。

塩害に強い建材を選ぶ

上記では「鉄筋コンクリートは塩害によって腐食する」としましたが、塩害に強い建材ももちろん存在します。

たとえば、ステンレスがその代表格です。

ステンレスの表面には膜(不動態被膜と呼ばれる)があり、その膜が塩害による腐食を防いでくれます。

また、合金も塩害に比較的強いとされています。

塗装を施す

塩害に対抗する力を持つ塗料を使って、建材を保護するというやり方もあります。

代表的なものとしては、ポリウレタン樹脂などが挙げられます。

また現在はガラスコーディングも利用されています。

ちなみに「塗装」とはまた異なりますが、亜鉛メッキなどを使って防錆加工を施すこともできます。

塩化物イオンを取り除く

「塩分によって建築物などは影響を受ける」としましたが、より細かくいうのであれば、これは「塩化物イオン」と呼ばれるものによる被害です。

そのためこの塩化物イオンを取り除くための処遇をとることも有効です。

細かい説明は省略しますが、腐食を防ぐための電力を流すなどの対応がとられます。

クリーニングを行う

クリーニングも有効です。

自分たちで真水でこまめに洗うだけでも効果がありますが、太陽光を受けることで汚れなどを分解できる光触媒を用いることもあります。

「海辺の家」はだれもが一度は憧れるものですが、実際にこのようなところに住むとなれば、塩害対策はほぼ必須だといえるでしょう。

植物に対する塩害を防ぐ方法

基本は、「塩害の被害を受けたら、すぐに真水で洗い流すこと」が有効です。

また「そもそも塩害を受けないための対策」を行うことも重要です。

基本的にはビニールハウスを導入して対策を行うことになりますが、水耕栽培を選択することも有効です。

まとめ

私たちの生活に、「塩」は欠かすことのできないものです。

しかし同時にこの塩が与える環境や建築物、植物への影響を見逃すことはできません。

今回は私たちにとって身近な範囲で塩害の影響を説明してきましたが、これから大切な財産を守るために、対策を行うことが必要です。