水質汚染とは?原因や現状と今後の対策とは
私たちは水道水を安心して飲んでおり、水質汚染とは無関係に思えます。
しかし、日本国内においても水質汚染による健康被害などが報告されています。
なかなか解決できない現状もあります。
そこで、この記事では水質汚染の概要や原因、現状、今後の対策をご説明します。
水質汚染の歴史
水質汚染とは人々の生活排水や産業排水により、有害物質が河川や湖沼、海岸などに排出されて水質が汚染されることです。
日本国内で水質汚染は縁遠いことに聞こえますが、毎年のように水道に起因した健康被害が発生しています。
国内の水質汚染の歴史を振り返ると、高度成長期に顕著になりました。
しかし、日本で初めて水質汚染が原因となった健康被害は「足尾銅山鉱毒事件」によるものです。
同事件は明治時代に発生しました。
銅山から排出された鉱毒によって、下流付近の農作物や農村の住民に大きな被害を与えました。
この足尾銅山鉱毒事件による被害は改善策が出されるまで86年の年月がかかっています。
このような経験があったにも関わらず、高度経済成長期に水質汚染は拡大しました。
昭和33年のイタイイタイ病は社会問題となり、水質汚染に関する法律も定めています。
現在も生活排水による汚染などの水質問題の課題は山積しています。
水質汚染の原因
ここからは水質汚染の原因を詳しくみていきます。
産業排水による水質汚染
産業排水とは工場や農場から流れる排水です。
前述したイタイイタイ病も産業排水に含まれる有害物質が原因でした。
当時は産業排水の処理方法が未熟であり、多くの人々が公害病に苦しみました。
そのような産業排水にはカドミウムや鉛、農薬といった有害物質が含まれています。
それらが川や湖沼、海などに流れ込み、魚などの体内に蓄積されてしまいます。
その魚を人間が食べてしまうと健康被害が発生します。
生活排水による水質汚染
現在の水質汚染の原因で最も大きいのが生活排水です。
生活排水は家庭から日常的に出る排水であり、台所やお風呂場などの生活雑排水とし尿の2種類があります。
この生活排水には窒素やリンという富栄養化の要因となる物質が含まれています。
窒素やリンが排水されて増えすぎると、植物プランクトンが異常に増殖します。
その結果、アオコなどの発生や植物プランクトンの死骸によりさらなる水質汚染が進行します。
気候変動による水質汚染
近年、気候変動による水質汚染が増加しています。
具体的には水温上昇、渇水、豪雨などにより水質汚染が起こることがあります。
温暖化による影響も出ており、水温が十分にさがらない状況が続くと湖沼でアオコが異常に発生する場合もあります。
水質汚染が引き起こすリスク
水質汚染によりさまざまな面でリスクが生じます。
生態系への影響
水質汚染により生態系に影響を及ぼすことがあり、絶滅危惧種に指定されている生物も存在します。
たとえば、カンボジアのメコン川に生息する川イルカは、死体から殺虫剤などの有害物質が検出されています。
これは水質汚染によるものであり、現在も生息する個体数は非常に少なくなっています。
また、人間においても食用にする魚などの水産資源が減少することも考えられます。
病気や感染症の蔓延
世界では毎年2億5,000万人もの人々が水質汚染による病気に悩まされています。
昨今の日本では水質汚染が原因となる健康被害は少なくなっていますが、発展途上国では設備面の未熟さから病気が蔓延しやすい状態です。
また、水道設備が整っていない国々では、泥水や動物の糞尿・細菌が混じった水を飲まざるを得ない状況であり、感染症の拡大のリスクが高くなります。
経済的な影響
水質汚染による経済的な影響も大きなものです。
富栄養化が進むと藻類の大量発生により、水生生物がうまく酸素を摂取できなくなり死に至ります。
東日本大震災では原子力発電所から海に大量の放射性セシウムを放出して、海産物に対する風評被害も起きました。
このような水産資源への影響は経済的な損失となります。
水質汚染の現状
私たちは1人あたり1日約250Lの汚水を流しているといわれています。
そのうち40gは汚れが含まれており、多くの人々が汚水を流すことで大きな汚れとなります。
また、環境省が発表した「平成30年度末の汚水処理人口普及状況について」を参考にすると、全国の汚水処理施設の処理人口は1億1,608万人であり、総人口に対する割合は91.4%です。
つまり、1,100万人程度は汚水処理施設を利用できない状況です。
さらに、汚水処理施設の人口に対する割合は、都市部と地方では大きな差があります。
人口5万人未満の市町村では、汚水処理施設の普及率が80.3%にとどまっています。
このことからも、国内における水質汚染が完全に防げていないことがわかります。
世界に目を向けると水道設備の整備が進んでいない地域があり、世界の8人に1人は安全な水が飲めない状況です。
安全な水とトイレがないことで毎年180万人の子供が病気により命を落としています。
水質汚染防止に私たちができる対策
水質汚染を防止するために、世界各国や日本国内においてもさまざまな取り組み、法整備がなされています。
それにより日本国内では産業排水が減少して、私たちの健康被害も少なくなりました。
しかしながら、前述のとおり日本でも汚水施設の普及が100%ではありません。
私たちは日常生活で汚水を流さないようにする必要があります。
たとえば、台所の排水溝には目の細かいストレーナーをつけたり、三角コーナーや水切りネットを使ったりしてみましょう。
食器についた汚れはキッチンペーパーなどで拭き取ってから洗うと洗剤の使用量も少なくなります。
ほかにも洗濯するときの洗剤の量を適量にする、家回りの排水溝は定期的にきれいにするなども汚水を少なくします。
一人ひとりが日常生活でできることを実践すると、総合的な汚水の量も減少するでしょう。
水質汚染を防いでいこう
水質汚染は以前からの課題であり、日本国内でも問題となっています。
現在も完璧に汚水を処理することはできていません。
ですから、一人ひとりが日常生活でできることを実践する必要があります。
汚水を減らす行動を意識して生活しましょう。