酸性雨がもたらす影響と我々がすべき対策
酸性雨は日本では1970年代あたりから、環境問題として取り沙汰されるようになってきました。
酸性雨による被害は深刻で広範囲にわたることから、我々ひとりひとりが防止に努めなければなりません。
ここでは、酸性雨による問題と人類がすべき対策について解説していきます。
酸性雨とは
どんなものが酸性雨に該当するのか見ていきましょう。
酸性雨の基準
酸性雨の基準としてはPHという数値が用いられます。
PHの値は7だと中性でそれよりも小さければ酸性、大きければアルカリ性を示すもので、数値が小さければ小さいほど酸性の度合いが強いです。
そして、環境問題として酸性雨に該当するかどうか判断する際にはPHが5.6以下かどうかを指標にしています。
その理由は人間の活動による影響がなくても、大気中の二酸化炭素や火山などの影響で、雨水のPHが5.6程度の弱酸性になるためです。
つまり人間の活動による影響で雨が酸性に傾けば酸性雨として扱われます。
雨だけとは限らない
酸性雨と聞くと雨だけを指すように思われがちですが、雨以外に雪や霧なども含めて捉えることが多いです。
広義では自然の降下物のうち、人間の活動が原因で酸性に傾けられたもの全般を指します。
酸性雨の原因
酸性雨は人間の生産活動による大気汚染が原因で起こります。
二酸化硫黄や窒素酸化物などが大気中に放出され、それが硫酸や硝酸に化学変化して雨に溶けるという具合です。
具体的には次のようなことが原因になっています。
自動車の排気ガス
自動車を走行させると排気ガスが出るでしょう。
この排気ガスはガソリンからエネルギーを作り出す際に放出されるもので、二酸化硫黄や窒素酸化物を含みます。
車1台から放出される排気ガスは、それほど大きな影響はありません。
しかし、数が多いと酸性雨の原因になってしまいます。
工場の煤煙
工場の煙突には二酸化硫黄や窒素酸化物が含まれており、酸性雨の原因の代表的な例です。
我々の身の回りの道具や普段使っている道具の大半は工場で製造されており、便利な生活の半面で地球環境を汚染していることになります。
火力発電
火力発電では石油や石炭などの化石燃料を使用しており、二酸化硫黄や窒素酸化物が発生します。
そして、日本では火力発電の割合が高く、発電量の8割前後を占めることから、電気の使用が酸性雨につながると言っていいでしょう。
国境を越えて影響をもたらすことも
日本で降る酸性雨はその原因が国内にあるとは限りません。
酸性雨の原因となる汚染物質は国境を越えて影響をもたらすこともあります。
特に日本海側の地域は、冬に大陸から吹いてくる季節風の影響が大きいです。
大きな工場や交通量の多い道路などがない地域でも、酸性雨が降ることがあります。
酸性雨によって引き起こされる問題
酸性雨が降るとどんな問題が生じるのか見ていきましょう。
自然環境への影響
酸性雨が森林に降り注ぐことで樹木が枯れてしまう被害が多く見られます。
これにより森林面積が減少し、気候変動など他の環境問題につながる可能性があるでしょう。
土壌へも影響があり、樹木が十分な栄養分を得ることができなくなり、栄養不足に陥ることもあります。
建物への影響
酸性の物質が金属やコンクリートなどに触れると化学変化を起こします。
雨として降り注ぐため、建物の外壁や屋根などのほとんどが影響を受けるものと捉えていいでしょう。
例えば、コンクリートの成分に含まれるカルシウムが溶かされてつららのような状態になって外に出てくることがあります。
銅も酸性雨によって溶かされるため、住宅の屋根も影響を受けるでしょう。
人体への影響
酸性の度合いが強い酸性雨だと、肌や髪などに当たると刺激を受けることもあります。
また酸性雨に溶かされた金属などが河川や海に流れ出ることで受ける影響も懸念が大きいです。
飲料水などに混ざる可能性もあるでしょう。
魚介類などの体に入り込み、それを我々が食べてしまう可能性もありえます。
酸性雨を防止するための取り組み
酸性雨を防止するためには、その原因となる二酸化硫黄や窒素酸化物の排出を抑えなければなりません。
政府による取り組み
政府では酸性雨のモニタリング調査を実施しています。
これにより、現在どの程度の酸性雨が降り注いでいるのか、原因物質はどこから来ているのかある程度は把握可能です。
煤煙を排出している工場に対しては、公害防止管理者の選任を義務付けるなどの対策を行っています。
一般の人にもできることは?
我々一般の人は、電気などのエネルギーの使用をできるだけ控えることが酸性雨の防止につながります。
冷暖房を使用するときには設定温度を少し緩やかにするだけでも効果があるでしょう。
使っていない部屋の照明器具なども、こまめに消すのが望ましいです。
また、車を買い換える際には、なるべくエコカーを選ぶようにしましょう。
近場の移動は徒歩や自転車なども活用し、車を使う機会を減らすことも重要です。
まとめ
酸性雨は排気ガスなどに含まれる二酸化硫黄や窒素酸化物などが雨に溶けることで起こります。
森林や土壌、建物などに深刻な影響を与え健康被害につながる可能性も高いです。
酸性雨を防止するためには、エネルギーの消費量を抑える必要があります。
エアコンや照明器具の節電など、できることから始めてみましょう。