海洋ゴミ問題とは?現状と私たちができること
海岸などに打ちあげられたゴミを見たことのある人も多いでしょう。
そのような海洋ゴミは大きな問題となっています。
海の生物に影響を与えるだけではなく、私たち人間にも悪影響を及ぼします。
そこで、この記事では海洋ゴミ問題の現状や私たちができることを解説します。
海洋ゴミ問題とは
海洋ゴミとは、海岸に打ちあげられた漂着ゴミや海の流れにのって漂う漂流ゴミ、海底に堆積した海底ゴミを総称した表現です。
海洋ゴミにはプラスチックやガラス、金属などの人工物と、海の生物の死骸などの人工物があります。
また、世界中の海にはすでに1億5000万トンものプラスチックごみがあり、2050年には海の魚と同等くらいまで増えるといわれています。
このような海のゴミ問題を海洋ゴミ問題といいます。
海洋ゴミの原因と現状
ここからは、海洋ゴミの原因と現状をご説明します。
海洋ゴミの多くはプラスチック
環境省が令和2年11月5日に発表した「海洋ゴミ問題について」を参考にすると、人工物の漂着ゴミの多くはプラスチックであることがわかりました。
同発表では日本各地における漂着ゴミの割合も示されています。
多くの地点でプラスチックゴミの割合が7割から8割となっており、その割合の多さが伺えます。
なかには漂着するゴミのほとんどがプラスチックである地点も存在します。
このプラスチックごみはペットボトルや食品用トレイなどさまざまです。
また、直径5㎜以下の大きさのマイクロプラスチックは魚が誤飲、誤食する可能性が高いです。
海洋ゴミの7~8割は陸域から流入している
海洋ゴミの7~8割は私たちが生活する街から流入しています。
たとえば、プラスチック製品の使用や消費で適正に処理されれば問題ありません。
しかし、意図しない散乱や不法投棄などにより散乱ゴミとなって河川に流れて海洋ゴミとなります。
日本財団と日本コカ・コーラが2019年4月から12月にかけて東京や神奈川などで行った、「陸域から河川への廃棄物流出のメカニズムの共同調査」では、ゴミの発生は投棄・ポイ捨て系と漏洩系の2つに分類できることがわかっています。
同調査では投棄やポイ捨てはモラルの問題だけではなく、産業構造や社会的な問題でゴミの投棄をせざるを得ない状況も判明しました。
ゴミを拾うだけでは解決しない
海洋ゴミは拾うだけでは解決しません。漂流ゴミは特定の場所に大量に流れつくことが多く、一度回収しても繰り返して漂着します。
また、回収したゴミは塩分や汚れなどによりリサイクルが困難です。
さらに、紫外線や高温で劣化したゴミは小さな破片になってしまうため回収が難しくなります。
漂着ゴミが拾えない場所に溜まってしまうこともあり、回収に大きな費用がかかることも考えられます。
また、自然物と混ざってしまうと分別も難しくなります。
海洋ゴミが与える影響
ここでは、海洋ゴミが与える影響を環境面と経済面にわけてご説明します。
環境に悪影響を与える
前述したように、海洋ゴミは魚やウミガメなどの海の生物がエサと区別できずに誤飲・誤食する可能性があります。
誤飲や誤食を繰り返すと胃で消化できず、エサが食べられなくなります。
最悪の場合は死んでしまうこともあります。
また、漁網やロープなどの海洋ゴミは海の生物に絡みつくこともあります。
特にプラスチック製品であれば丈夫にできているため、人間の手を使わないと外れないものも多いです。
こういった漁網やロープなどが絡みつくことで生物が死んでしまうこともあります。
ほかにも、海洋ゴミの影響で海浜植物の生育を阻害したり、海底のヘドロ化が進行したりすることも考えられます。
経済的な悪影響
海洋ゴミの問題には経済的な悪影響もあります。
たとえば、観光地であれば海洋ゴミにより景観が悪化して観光客の減少につながります。
また、水産物に海洋ゴミが混ざってしまうと、取り除く作業が必要です。
なかでも海苔やチリメンジャコといった水産物に海洋ゴミが混入すると除去作業が難しくなります。
海洋ゴミが混入した水産物は商品価値が低下して、ときには風評被害を受けることもあるでしょう。
なお、漂流した海洋ゴミの回収や処理は各自治体が負担しています。
日本の漂流ゴミは日本海側や東シナ海といったところで多く、都市部は少ないです。
つまり、市民1人あたりの負担金額が多いことを意味しています。
大量の海洋ゴミが海面や海中に堆積すると、船舶の事故を引き起こす可能性もあります。
船がプラスチック製の袋を吸い込むとエンジンの故障などにつながり、漁業にも影響が出てしまいます。
このように海洋ゴミは経済的にもさまざまな悪影響を及ぼします。
海洋ゴミ問題において私たちができることとは
海洋ゴミ問題は個人、企業や団体のそれぞれで対策できることがあります。
特に海洋ゴミの多くを占めるプラスチックのポイ捨てや投棄をしないことが大事です。
また、使い捨て用のプラスチックの利用を控えることも大切でしょう。
日本ではすでに有料化されましたがレジ袋の消費も海洋ゴミの増加につながります。
環境面を考えると、レジ袋の成分を変えればいいわけではりません。
一人ひとりがマイバッグやマイボトルを持ち歩くことでプラスチック製品の利用を抑えることが可能です。
企業や団体においては、消費者とともに発信していくことが大事です。
たとえば、神奈川県は2030年までのできるだけ早期にプラスチックゴミをなくす「かながわプラごみゼロ宣言」は発表しました。
とはいえ、プラスチック製品は費用面などから使用をやめられない企業もあるでしょう。
大切なのは私たち消費者一人ひとりがプラスチック利用について多少の負担を受け入れることでしょう。
地球環境のことを自分事としてとらえて、できることから実践していく必要があります。
海洋ゴミを減らしていこう
日本の海には大量の海洋ゴミがあります。
この海洋ゴミは拾えば解決するような問題ではありません。
一人ひとりができることを継続して、海洋ゴミの減少に努める必要があります。
これまでの日常を振り返って、海洋ゴミの減少に取り組みましょう。